田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
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イラスト/ウノ・カマキリ
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 米国で黒人男性が警察官に殺害される事件をきっかけに広がったデモ。そのデモへの対応からトランプ大統領の真意をジャーナリストの田原総一朗氏は分析する。

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 米国が大変な事態となっている。きっかけは何とも陰惨な出来事だ。

 5月25日夜、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで、偽札使用の疑いをかけられた黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が、白人警官のデレク・チョービンに、ひざによって首を押さえられ、「お願いです。息ができない」と懇願していたのに、8分以上も押さえ続けられ、死亡した。何人もいた警官たちは、誰一人それを止めようとしなかった。そして、その場面が撮影された動画が、SNSで拡散されたのである。

 米国では、警官による黒人の殺害事件が何度も起きている。当然というべきか、ミネアポリスでは、白人も大勢参加した人種差別反対のデモが起き、参加者たちが警察署に放火し、建物は全焼した。

 デモはそれにとどまらず、ニューヨークやロサンゼルスを含めて、全米の百数十都市に広がり、どんどん勢いが強くなっている。すでに、9千人以上が逮捕されているのだが、デモは広がるばかりだ。

 ただし、ジャーナリストの津山恵子氏によれば、デモは二つのパターンに分かれている。昼のデモは、「ブラック・ライブス・マター(黒人の命は大切だ)」というグループなどが中心で、主に10~30代による平和的な集会と行進という。

 ところが、夜になると、事態が一変する。

<ニューヨークの繁華街、5番街やSOHOでは、ブティックや百貨店のウィンドーが壊され、中の商品が略奪された。郊外では、取り締まり中の警官がひき逃げされたり、銃撃されたりする事件まで起きている。暴動の捜査を主導するビル・デブラシオ・ニューヨーク市長は、「夜の略奪者は、市外から来ている」と明言。デモを、黒人など有色人種が中心の危険な運動だと印象付けるため、略奪や警察官攻撃を繰り返すグループがいることを示唆している>(「AERA」6月15日号)

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選挙で勝てる、という思いが揺らいでいない