「新型コロナウイルス感染拡大で旅館やホテルでの高級魚の需要が減り、ヒラメやスズキは半値以下。今も漁に出られない船が多い。そのうえ、処理水まで海に放出されたら、風評被害で漁業従事者の生活は成り立たなくなる。海洋放出には断固反対です」
宮城県漁業協同組合の奥田一也指導部長は訴える。同漁協は6月15日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を行わないよう国に求める要望書を、村井嘉浩・宮城県知事へ手渡した。
同原発で発生した汚染水を浄化した処理水は増え続け、現在の貯蔵量は約120万トン。2022年には敷地内の保管場所が限界を迎えると言われる。
経済産業省の小委員会が今年1月、海洋放出か水蒸気放出が最も現実的と示唆する提言をとりまとめ、各方面から反発が高まった。トリチウムは依然として含まれているからだ。
国際環境NGO・FoE Japanの調べでは、岩手、宮城、福島、茨城、千葉、東京の38漁協が放出に反対している。同原発から最も近い漁港がある福島県浪江町でも、議会が全会一致で反対を決議した。