名脇役の印象が強い佐藤二朗さんですが、監督・脚本をご自身で務めた映画『memo』は強迫性障害を扱った骨太の映画です。映画に登場するエピソードは、小学生のころから「メモ癖」があったという佐藤さん自身の経験をベースにされています。
いまや子どもも大人も苦しんでいる現状をお伝えし、どうしたらいいのかと佐藤さんにアドバイスを求めました。すると「ええっ!! 難しいな~。どうしたらいいんだろう。全然わかんない。むしろ親として教えてほしい(笑)」と前置きをしつつ、佐藤二朗流の発想転換の方法を教えてくれました。
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■「マイナスばかりじゃない」佐藤二朗氏インタビュー
僕(佐藤さん)が小学生のころ、カウンセラーから『クセを治したら、あなたのよい面がなくなるかもよ』と言われたのはよく覚えているんです。強いこだわりがあると「自分はおかしいのでは」と落ち込むこともありますが、発想を変えてくれる言葉がうれしかったんでしょうね。ああいう言葉を聞けると気が紛れますね。
それに自分ではマイナスだと思っていることも、見方を変えたらちがうってこともあります。鍼治療の原理は、鍼でつける傷を利用して血流をよくすることなんだそうです。『笑福亭仁鶴50周年記念ドラマ だんらん』の脚本を書かせてもらったとき、その話を活かして、あるセリフを盛り込ませてもらいました。おじいさん役の近藤正臣さんが孫の菅田将暉くんに将棋を指しながら、関西弁でこう言うんです。
「血ィが必死になって傷を補おうとする。それが、生きる力や」。
自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃいいシーンです(笑)。鍼治療と同じことは人生にも言えるかもしれません。傷つくとか、自分のこだわりで悩むとか、ものすごいめげるとか、それって命を燃やしていることかもな、と。
うまくいかなくても、他人より劣っていると悩むことがあっても、別の意味ではよいものを生んでいることがあります。むしろ自慢してもよいぐらいのことだってある。僕自身も正社員を1日で辞めちゃったり、いろいろ悩んだりしたけど、マイナスばっかりじゃなかったなあ、と。それだけは自分の経験もあるので、息子に自信を持って伝えられると思っています。