佐藤二朗さん(撮影・矢部朱希子)
佐藤二朗さん(撮影・矢部朱希子)
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インタビューに丁寧に答えてくれた佐藤二朗さん(撮影・矢部朱希子)
インタビューに丁寧に答えてくれた佐藤二朗さん(撮影・矢部朱希子)

 今年の夏は、帰省を控えるよう呼びかけられた「特別な夏」でした。お盆休み期間中、どこへも行けずに家族の仲が深まった反面、一緒にいる時間が長くなった分、トラブルが起きた人もいたのではないでしょうか。不登校新聞の編集長、石井志昂さんは「家族ってずっといっしょにいると正直、ムカついてきますからね」と共感を示し、そんなムカつきの正体について考察しました。それは、新型コロナウイルスの影響による「急性ストレス反応」かもしれません。

【写真】「マイナスばかりじゃないよ」と自身の経験を語る佐藤二朗さん

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コロナ禍で拡がる急性ストレス反応

 国立成育医療研究センターの調査によれば、コロナ禍で4人中3人の子どもが何らかのストレス反応を見せていることがわかりました。

 アンケート調査は、2020年4月30日から5月31日の期間に実施されたもので、回答者は7歳から17歳の2591人。「すぐにイライラする」「最近、集中できない」などのストレス反応を示していた子が全体の75%を占めていました。なかでも「寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めたりする」と不眠に悩んでいた子は2割以上もいました。

 自分自身をふりかえってみても、最近なんだか、神経質になっていることに気がつきました。今まではさほど気にならなかった洗濯機や掃除機の音がうるさいと感じ、服の汚れや汗も気になるタイミングも増えました。私だけでなく、妻も家の掃除や洗濯が妙に入念になっている気がします。神経質になったからかイライラもしてしまい、ささいなことから妻とも言い合いに。こんなに短気だったかと自分でも驚いています。

 ストレス反応が深まれば強迫性障害への発展も懸念されます。強迫性障害とは、強い不安感や不快感を打ち消すために、なんらかの行為をくり返すというもの。有名な強迫症状は「何時間も手洗いをする」「家の鍵を閉め忘れたかが心配で何度も確かめてしまい、目的地に着かない」などです。心療内科医・明橋大二さんによれば、年齢にかぎらずコロナ禍で強迫性障害を悪化させているケースがあるそうです。

 強迫性障害とまではいかなくても、ストレスによってこだわりが強くなりトラブルを引き起こす悪循環は誰しもが陥りがちです。そこで経験者の話を参考にしたいと思い、俳優・佐藤二朗さんにお話をうかがってきました。

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佐藤二朗が言われて気が紛れたという言葉とは