中世の魔女狩りや、ヒトラーのユダヤ人弾圧と同じ。たばこを吸う「少数民族」を根絶やしにしようとしているとしか思えません。

 JR東日本の新幹線の車内は禁煙ですし、駅に喫煙所があったとしても、ホームの端っこ。神奈川県などでは、デパートや病院などでは全面禁煙するという受動喫煙防止条例もあり、人権さえ認められていないような状態です。

 それに加えて昨年10月には、1箱あたり約100円の大幅値上げです。

 そのときは、事前に116カートンまとめ買いしました。まだ、1年分くらいはストックがあります。

 もっと買いだめしようかと思ったけど、たばこの賞味期限は10カ月ほどです。

 06年7月に値上げされたとき、どれくらいで味が落ちるか試したところ、冷暗所なら2年間は大丈夫でした。その先は冷凍保存しようかとも考えましたが、費用対効果を考えると難しい。冷凍庫を借りるなど年間の維持費が約7万円かかるので、一気に300円くらい値上げされないと、かえってマイナスになる。小宮山さんは値上げ幅を「年100円ずつ」と言っているので、冷凍保存はできません。

 そもそも、「700円台までなら税収は減らない」というのは間違いです。トータルでみると、財政負担は増えます。

 値上げして販売量は落ちても、1箱あたりの税収は増えるので、たばこ税の税収は減らないかもしれません。しかし、葉タバコ農家や、たばこの葉を巻くライスペーパーの会社など、関連会社の売り上げは落ちる。その分の税収は確実に減ります。

 また、喫煙者が減れば医療費も減るというのも間違いです。この20年、喫煙率は劇的に下がっていますが、医療費は減っていません。非喫煙者は喫煙者と比べて寿命が約3・5年長いと言われています。寿命が延びると年金給付額が増える。

 ですから、
「財政負担が増えますが、たばこが嫌いなので値上げします」
 というのが正解です。

 禁煙推進派の人たちは、増税や受動喫煙に関する政策を提案する際にいろいろな理由を挙げますが、冷静な理屈はありません。安住財務相が「小宮山先生は、たばこが嫌いなんですよね」と言っていましたが、まさにそのとおりだと思います。

 喫煙所もどんどん少なくなり、たばこが値上げされ、このままでは喫煙者は根絶やしにされかねない。かくなる上は、島を買い占めて移住し、堂々と喫煙できるよう独立運動するしかないですね。
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もりなが・たくろう 経済評論家 1957年、東京都生まれ。独協大教授。著書に『年収崩壊』(角川SSC新書)など。ミニカー2万台など、「B級グッズコレクター」の顔も


週刊朝日