自民党総裁選で菅義偉新総理が圧勝したことで、戦々恐々としているのが、霞ヶ関の法務官僚だ。
「名前を聞くだけで震える」と言われるほど、官房長官時代は“剛腕“をふるってきた菅新総理。
東京高検前検事長で官邸の「守護神」と言われた黒川弘務氏を重用し、検察ににらみを利かせてきた。
安倍政権を振り返っても、森友、加計疑惑や桜を見る会など、数々のスキャンダルに見舞われ、刑事告発された。森友疑惑の公文書改ざん事件では近畿財務局の職員が自殺するなど日本中を揺るがす問題へと発展した。また安倍政権の重要閣僚だった、甘利明衆院議員のUR疑惑、経産相だった小渕優子衆院議員の政治資金疑惑など「菅ー黒川のホットラインでスキャンダルを押さえたので、長く政権が続いた側面はある」(自民党幹部)という。
とりわけ、黒川前検事長が5年近く法務省事務次官を歴任し、目を光らせてあらゆる案件に口出しできたのが大きいとみられていた。
ところが、その黒川前検事長氏が賭けマージャンで失脚。河井克行前法務相夫妻は公職選挙法で検察によって立件され、代わって検察トップの座についたのが、長年、黒川氏のライバルとされた林真琴検事総長だった。
「菅さんは黒川氏を定年延長までして、検事総長にしようと考えていた。林検事総長は黒川氏に代わって、2度も法務省事務次官候補に上ったが、菅さんの意向で官邸が蹴った。黒川氏の続投は当時、異例の人事とされ、菅さんが林検事総長を快く思っていない」(法務省関係者)
ゆえに、菅新総理と林検事総長の関係が注目されているという。そしてさっそく、林検事総長に災難が降りかかってきた。
9月15日に開かれた記者会見で森雅子法相はご機嫌斜めだった。
会見が終わると、「私だけがなぜ知らないの? 次官に説明させる」と立腹だったというのだ。法務省関係者がこう話す。
「実は林検事総長が就任直後に騒動があった。総長づけの事務官がセクハラ騒動を起こし、関東の別の地検に左遷されたのです。その報告が森大臣に上がっておらず、ご立腹だった。セクハラ騒動は林検事総長の就任と同時期にあったようです。現在は、稲田前検事総長時代の事務官が暫定的についている」