このように、投資のチャンスを見つけるのに、当局の動きを観察して先を読むことは実はとても大切なことだ。
考えてみてほしい。
政府がある問題を解決することを決めて、多額のお金をこれから投じるとしよう。それは結果的に、誰かが多くのお金を稼ぐことを意味する。政府が正しいか間違っているかはまったく関係がない。政府がたくさんのお金を使うので、関連する事業に携わる企業が利益を手にするにすぎない。
例えば、政府が「大規模な植樹をする」と言ったとしよう。政府にはたくさんの予算があるから、そのお金は木を持っている会社に落ちる。だったら、「木を持っている会社に資金を提供しよう」や「植樹作業を行う会社の株を買おう」などとなるわけだ。
私は、政府が「このような問題があるので、解決したい」という動きにいつも注目している。その情報をもとに、誰がお金を手に入れるかを考えるのだ。
ここまでの説明で、みなさんもうおわかりだろう。アベノミクスは、国が莫大な借金をして株式市場に投資し、株価を引き上げる政策だった。そして、その政策は菅首相に引き継がれる。投資をする人を喜ばせるためだ。
だから怠け者の私はETFを買った。しかし、借金がさらに増えることは、日本にとって決して良い話ではない。
(取材/朝日新聞シンガポール支局長・西村宏治 構成/本誌・西岡千史 監修/小里博栄)
ジム・ロジャーズ/1942年、米国アラバマ州出身の世界的投資家。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界3大投資家」と称される。2007年に「アジアの世紀」の到来を予測して家族でシンガポールに移住。現在も投資活動および啓蒙活動をおこなう
※週刊朝日 2020年10月2日号