エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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2017年6月、「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会合であいさつする安倍晋三前首相。20年7月、女性管理職3割目標達成を先送りすることを発表した (c)朝日新聞社
2017年6月、「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会合であいさつする安倍晋三前首相。20年7月、女性管理職3割目標達成を先送りすることを発表した (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会合であいさつする安倍晋三前首相

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“女性が輝く”のは、既存の男性中心社会にとって都合の良い形でだけ。それがこの約8年の女性政策の本音であったことは明らかです。低賃金の非正規雇用の女性を増やして人手不足を補う一方で、女性幹部を3割に増やす目標は17年かけても達成されず、さらに10年先送り。パンデミックが起きた途端に、不安定な立場で働く女性たちが真っ先に失職しました。女性の人生は父親か夫の庇護のもとにある前提で制度が作られ、男性に依存しなければあっという間に相対的貧困に陥るような構造が温存されています。女性を男性のお世話係として確保しておくにはいい方法ですが、女性が経済的社会的に自立して生きていくための助けにはなりません。男性優位社会の維持強化のために 女性を“活用”しようというのが本心でしょう。口先では女性を励ますけれど、自分が変わる気はない。同じような振る舞いは企業やメディアなどの組織にも見られます。

 自民党総裁選と新生立憲民主党の人事の顔ぶれも、絶望的なまでに男性ばかりです。この先何年経ったら政界をはじめどこの職場でも女性リーダーが半数を占めるようになるのかと考えると、自分が生きている間は無理かもしれないという気がしてきました。

 若い女性にはぜひ、日本ではない場所で勉強したり働いたりすることを視野に入れてほしいです。ジェンダー平等に前向きな取り組みをしている社会で経験を積み、人脈を築いてほしい。近場なら台湾もいいでしょう、親日的ですし、テクノロジー面でも先進的です。男尊女卑的な役割分担に適応するためにエネルギーを割くよりも、視野を広げ、自分の強みを伸ばすことに注力できる環境を探して下さい。これは本気で言っています。日本では、活力と可能性に満ちた貴重な時間を生かせません。世界は広く、学びはあなたを強くするでしょう。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2020年9月28日号