福島第一原発周辺の「手抜き除染」をジャーナリストの桐島瞬氏が緊急取材した。正月明けの1月6日に現地に赴くと、除染作業で出た除去土壌や草などを詰めた袋が道路脇に置き去りにされているなど、驚愕の実態が明らかになった。さらに、手抜き除染もかすむような衝撃的な出来事が起きていた。
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福島県二本松市にある山ノ入ダム。市民の水ガメともなっているこのダムの近くに、除染作業で出た土を投棄しているとの話を聞いた。早速、現場を訪れた。
ダムと道一本を挟んだ高台にその場所はあった。あたり一面にうずたかく積まれた土。これが除去土壌なのか。土の線量は、最高で毎時0.36マイクロシーベルトを示していた。
30分ほどすると土砂を満載した2トンダンプが来た。場所を選び、一気に土を下ろした。そこには遮水シートも施されていない。ダンプの運転手に話しかけた。
――これは除染で出た土ではありませんか?
「確かにそうだけど、表土じゃない。仮置き場を作るために掘った穴の残土で、地表から40センチ以上、下の土だから汚染されていない」
――でも線量は高い。
「そんなことはないと思うけど……。元請けの指示でやっているので大丈夫だ」
運転手は問題ないと繰り返したが、土に含まれる放射性物質が、ダムの水に混ざる可能性もあるのではと聞くと、「確かに心配だね」と言った。
環境省の「除去土壌の収集・運搬に係るガイドライン」では、除去土壌を運ぶ際には、容器に入れるか、荷台の土にシートをかぶせると定めている。だが、そのどちらもしていない。
二本松市放射能測定除染課に尋ねると、こんな答えが返ってきた。「運搬の仕方に疑問はあるが、表土ではないのでガイドラインは適用されません。したがって、いまのままで続けます」。
だが、環境省の答えは違った。「ガイドライン対象外であっても、毎時0.23マイクロシーベルト相当の線量を持つ土であれば、安全対策を施すのが当然です」。
※週刊朝日 2013年1月25日号