■女言葉の衰退が影響
綾瀬はるかさんが出演した、12年放送のアクエリアスのビタミンガードのCMでは「っす言葉」がアクセントになっている。綾瀬さんは女友だちと陶芸教室、ゴルフ練習、砂風呂を楽しみ、シーンごとに「今日も充実っす」と言う。言葉を手書きした花まるスタンプも表示された。CMのコピーを手がけた、電通の小川愛世(あきよ)さん(36)は言う。
「このころリア充という言葉が広く使われ始めて、週末にボルダリングをするなど、女性たちは日々を充実させることに夢中になっていました。加えて、商品もしっかりしたレモン味で、飲んだあとに充実感があることから『充実』がキーワードになりました」
しかし「充実」の言葉だけではキャッチコピーとしてやや硬い。複数の候補を出して、選ばれたのが「充実っす」だった。
「普段、『〇〇っす』と言いそうにない、柔らかな雰囲気の綾瀬さんが、明るく元気に『充実っす!』と言ったときに生まれるギャップが新鮮で、チャーミングになると考えました。『っす言葉』を使うことで、『充実です!』『充実だね!』にない爽快感や勢いが加わり、素がポロッと出たようなニュアンスもつきました」(小川さん)
男女ともに使われる「っす言葉」。でも、中村さんは、男性と女性とでは使い方は違うと指摘する。男性が丁寧さが必要な場面なのかどうかで「っす」の使用を判断するのに対し、女性は自分をどう打ち出したいかで決めるという。
「女性の『っす』の使用には、『だわ』『かしら』などの女言葉が死語になったことも影響しています。綾瀬さんのような同性に好まれる女性のCMで『っす言葉』を使い、男性や女性の枠にとらわれない“新しい女性らしさ”を打ち出している点が興味深いです」(中村さん)
■文末の便利なスタンプ
キーワードは「仲間意識」。そう語るのは、冒頭の「アサヒ ザ・リッチ」のCMを手がけた博報堂のクリエイティブディレクター・臼井健太朗さん(45)だ。「っす言葉」には男女や先輩後輩の垣根を越える効果がある。