自民党千葉県連が、来年春の県知事選への擁立を目指していた、前スポーツ庁長官の鈴木大地氏。本誌でも、同県連が鈴木氏の擁立に動き、現職の森田健作知事も容認していると報じたばかりだったが、それから数日間で候補者選びが白紙に戻った。いったい何が起きたのか。
「今日の会議で、鈴木大地さんに要請することを正式に決定するはずだったんだが。それが……」
10月30日に開かれた同県連の国会議員らの会議。関係者の一人がそう話した。
千葉県出身で五輪金メダリスト、初代スポーツ庁長官と、肩書は申し分ない鈴木氏を、同県連は知事選の候補者として推していた。
自民党関係者によると、少なくとも25日の日曜日の時点では、鈴木氏本人も前向きな話をしていたという。
突然のちゃぶ台返しの背景にあるのは、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を務める森喜朗元首相の存在だ。
森氏は28日に、千葉県連会長の渡辺博道衆院議員らと面会した際、
「(鈴木氏は)向いていない。選挙を知らなさすぎる」
と伝えたという。
つまり、鈴木氏の知事選への出馬に反対する意向を示したのだ。
森氏は、政治家になった当初からスポーツ庁の創立を目指していたといい、それを実現した。その初代長官を務めた鈴木氏にとって、森氏はいわば後見人のような存在だ。自民党の関係者が明かす。
「自身がつくった省庁の長官が万が一、知事選で落選した場合、『スポーツ庁』の名前に傷がついてしまう。それより、鈴木氏はもともと水泳選手なので、基本的には『スポーツ界で頑張ってほしい』という考えだったようです」
森氏と渡辺氏が面会した時、別室には鈴木氏もいたが、その場では渡辺氏らに対し、出馬しないという返事はしなかったという。
「その後、鈴木氏から渡辺氏に電話があり、『申し訳ない』と伝えられたと聞いています」(前出・自民党関係者)