”岸田潰し”も成功した菅首相(C)朝日新聞社
”岸田潰し”も成功した菅首相(C)朝日新聞社
”岸田潰し”もした二階幹事長(C)朝日新聞社
”岸田潰し”もした二階幹事長(C)朝日新聞社

 公明党は次期衆院選で広島3区に斉藤鉄夫副代表を擁立するとを発表した。

 今年7月、公職選挙法違反容疑で逮捕された前法相、衆院議員の河井克行被告が離党。現在も裁判が継続中であることから、自民党が誰を擁立するか、注目されていた。だが、先に手を挙げたのは自民党と連立を組む公明党だった。広島3区は自民党宏池会の岸田文雄会長のお膝元。中選挙区時代は地盤でもあった。

「宏池会内では早くから、河井克行、案里被告の後継者を探すべきと、言われていた。だが、岸田会長は『県連会長に一任している』と全く動かず。そこに、公明党が電撃的に斉藤氏を擁立。岸田氏は何も情報がなかったようで、話を聞いた時は『本当なのか』と絶句していた。相変わらず、トロいですね」(宏池会所属の国会議員)

 公明党は、大阪より西では小選挙区選出議員はいない。そこで、さらに党勢拡大には小選挙区の議席が不可欠だと広島3区に目をつけ、数カ月前から擁立を検討していたという。公明党の議員がこう話す。

「河井スキャンダルのあとで、自民党が候補を立てにくい。斉藤氏は広島市で高校まで卒業。絶好のチャンスだと捉えた。しかし、公明党の票では絶対に勝てません。それで良好な関係にある自民党の二階幹事長に頼りました」

 二階派所属議員も一時、広島3区から出馬を検討していた。だが、公明党の打診があり、方向転換。

「二階氏から協力を得られると感触があり、発表となった」(前出の公明党議員)

 この決定には菅首相と二階幹事長との阿吽の呼吸もあったという。自民党のベテラン議員はこういう。

「菅さんと岸田さんが良くない関係であることは、二階氏も十分に承知している。次の総裁選のライバルでもある。『菅政権は自分が作った』と豪語する二階氏は、岸田さんがもたもたしている間に、公明党で決めれば、岸田さんは恥さらすことになる。石破茂氏に続き、岸田潰しにもなる。公明党なら岸田さんは直接、文句は言えませんからね。岸田さんを潰して、公明党と菅さんにも恩を売れる。二階さんにとっては一石二鳥です」

 一方、政権のもう一人の重鎮である麻生太郎副総理兼財務相は蚊帳の外だったという。

「麻生さんは『菅と二階で決めてしまって、何もわからん。菅はいうこと聞かないな』とぼやいている。岸田さんは慌てて候補を探しているそうだが、河井スキャンダルのあとで、厳しい選挙。手を挙げる人はいません。それより岸田さんのリーダーシップのなさが致命的。もう総裁選はダメだろうし、派閥会長としても終わったかもしれない」(前出・宏池会の国会議員)

(今西憲之)