ミッツ・マングローブさん
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芸能界のいい夫婦といえば…(イラスト/ミッツ・マングローブ)
芸能界のいい夫婦といえば…(イラスト/ミッツ・マングローブ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、芸能界の「いい夫婦」について。

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 11月22日は「いい夫婦の日」でした。88年頃から提唱され、2000年代に入り浸透した記念日だそうですが、そもそも「いい夫婦」とはどのような夫婦なのか。「いい夫婦」と言いつつ、その主たる文脈は「いい夫像の強要」な気がしてならないのは私だけでしょうか。

 気付けば「記念日」だらけの世の中。ひょっとして「いい夫の日」もあるのでは? 調べてみたら案の定ありました。10月10日。これまた「家事や育児に参加する夫」「妻を大切にし、ちゃんと稼いでくる夫」といった、妻(女性)側のお眼鏡に適う「夫(男性)像」を推進するのが目的であることは明白です。

 ならば「いい妻の日」は? 文字にしただけで、今にもフェミニスト団体から「世の妻はみんな頑張っているのだから、これ以上要求するな!」「上から目線の男性的価値観は女性蔑視だ!」などと抗議が殺到しそうなネーミングですが、ありました。12月3日。しかしこちらの名前は「妻の日」となっています。なんでも「12月3日→1(いい)・2(妻)・3(サンクス)」という、目を覆いたくなるような語呂合わせも然ることながら、それ以上に「夫婦」や「夫」には理想と改善を求めているにもかかわらず、妻は初めから「いい妻」であるという大前提にびっくりします。そして「(そんな良妻に)感謝をしろ」と、結局は男性へのさらなる強要。これが現代の夫婦関係のスタンダード・モラルなのであれば、つくづく自分は夫婦制度と無関係な人種で良かったと思う次第です。

 無論、これぐらいしないと男はすぐ調子に乗って、愛情や思慮を疎かにしがちな生き物であるのも分かります。それにしても、いかに今まで妻たちが虐げられ、裏切られ、傷つけられてきたかという心の叫びを届けたいのであれば、こんな駄洒落みたいな記念日を設けるだけで何かが変わるのか甚だ疑問です。朝ゴミ捨てをして、夜ケーキと花を買って帰るだけでは到底解決しないと思うのですが。

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1月31日は何の日?