韓国で累計15万部のベストセラーになった作品で、周囲の韓国文学ファンも絶賛しているのがこちら。壮絶な人間ドラマと復讐劇はリアルで生々しく、映画でいうとキム・ギドク監督作品のよう。硬派な作品を好む人に特におすすめです。

『ピンポン』
著:パク・ミンギュ/訳:斎藤真理子/2420円(白水社)
いじめられっ子の男子中学生2人が、原っぱで卓球台を見つけてハマる。地球の運命を卓球で決めるという荒唐無稽な展開に2人は?

 あらすじを見てもその展開が予想できませんよね。ですが、彼独特の文体と、とにかく奇想天外のストーリー展開に驚かされ、そして楽しめます。面白く読み進める中に、韓国の現代社会が抱える問題も垣間見え、読み応えがあります。

『あやうく一生懸命生きるところだった』
著:ハ・ワン/訳:岡崎暢子 1595円(ダイヤモンド社)
40歳を目前に何の計画もなく会社を辞め、「一生懸命生きない」と決めた著者が、自分らしく生きるコツを紹介するエッセー。日本は10万部突破。

 努力してきたけど、やりきれなくなったイラストレーターが、「頑張らない人生」の実験生活をユニークなイラストと文章で綴っています。みんながもやもやと感じていることを言語化していて、読むとすっきりします。

『春の宵』
著:クォン・ヨソン/訳:橋本智保/1980円(書肆侃侃房)
苦悩や悲しみが癒やされるわけでもないのに酒を飲まずにいられない人々。春の宵のようにはかなく、切ないまでの愛と絶望を綴る七つの短編集。

 つらい時や悲しい時にお酒を飲まずにはいられない心境ってありますよね。短編に出てくる人物は、身近にいる人たちのようで共感できます。人生の悲哀があり、お酒のように、大人になるとわかる、味わい深い小説。

※価格は税込み

【書評家 倉本さおりさんが語るK-BOOKの魅力】

“K−BOOKブーム”の中心にいるのは70~80年代生まれの女性作家たち。彼女たちの作品(『82年生まれ、キム・ジヨン』『アーモンド』など)には、ポップカルチャーに慣れ親しんできた世代ならではの軽やかさと、社会問題を「自分事」として捉え、弱者に寄り添い連帯を促すパワーがあるのが特徴です。日本と同様にジェンダー格差に苦しんできた背景があり、家父長制の在り方もよく似ている。日本人にも腑に落ちることが多く、勇気づけられる点も人気の理由の一つでしょう。

1979年生まれ。共同通信文芸時評をはじめ、新聞やラジオなどでさまざまな国の文学を紹介。

(文・構成/本誌・吉川明子)

週刊朝日  2020年12月4日号

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