欧米で新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。国内での一般人への接種開始は来年夏以降とみられる。だが、すぐ元の生活に戻れるわけではなさそうだ。 AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号から。
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英国で12月8日に新型コロナウイルスワクチンの接種が始まったのを皮切りに、アメリカやカナダなどで次々とワクチンの接種が開始されている。
英国では、最初の1週間で約13万8千人の医療従事者や高齢者が接種を受けた。
接種が始まったのは米ファイザー社と独ビオンテック社が開発したワクチンだ。これ以外に、米国立保健研究所と共同で開発している米モデルナ社のものも近く米国で緊急使用が認められる。また、英オックスフォード大と開発している英アストラゼネカ社は英国政府に申請中で、早ければ年内に承認されるとみられている。
緊急使用が承認される基になった臨床試験(治験)の中間報告によると、ファイザーとモデルナのワクチンは90%以上、アストラゼネカのワクチンは接種回数により異なるが平均70%の有効性があったとされる。
ワクチンに詳しい石井健・東京大学医科学研究所教授は現状をこう評価する。
「新型コロナウイルスのパンデミックが始まった当初、1年以内にワクチン接種が始まるとは想像もしなかった。中間報告とは言え、これだけ有効なワクチンの接種が1年以内に始まったのは、これまでのワクチン開発の常識で考えると奇跡に近い。歴史に残る業績だと思う」
米科学誌「サイエンス」は、今年の科学のブレークスルーの筆頭に新型コロナウイルスのワクチンを選んだ。
■効果解明されていない
ただし、日本国内でワクチン接種が始まる時期は、まだ不明だ。
日本政府は来年前半までに「全国民に提供できる数量のワクチンを確保する」としており、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカからワクチンの供給を受けることで合意している。しかし、接種が始まるのは、国内でワクチンが承認された後だ。