コロナ禍での年末年始、帰省控えで一人暮らしの高齢者宅は、特殊詐欺やガス点検強盗などに注意してほしい。最近はまた新たな手口が報告され、すでに被害者が出ている。電話で巧みに家の外におびき出し、その隙に空き巣に入る、「アポ電空き巣」とでもいうべき手口が秋口から増えている。
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10月15日、横浜市磯子区の無職女性宅に孫を名乗る男から電話がかかってきた。「仕事の書類を間違った場所に送ってしまい、お金が必要になった」と言われ、女性は現金100万円を用意して、近くの店で孫を待った。
しかし、約束の時間が過ぎても孫は現れない。おかしいと思って帰宅すると、窓ガラスが割られており、タンス預金約1200万円が盗まれていた。調べによると、女性は以前に電話で「孫」から「急にお金が必要になった。自宅にいくらある?」などと問われ、答えてしまったようで、外におびき出された隙を狙われた可能性が高い。
11月17日には同市南区の80代女性宅から貴金属などが入った金庫が盗まれたが、この事件でも息子を装う人物から電話があり、女性は自宅に多額の現金があると答えていたという。犯行グループは女性の留守を狙って空き巣に入ったとみられる。
これら「アポ電空き巣」と同様の手口の「アポ電詐欺」も発生している。
埼玉県北部の88歳の女性は10月、おいを名乗る男から電話を受けた。「仕事の契約書をなくして、お金を補填(ほてん)しなければいけない。いくらか用意できないか」と言われ、200万円なら用意できると伝えると、男は「封筒に入れて準備しておいて」と言って電話を切った。すぐに郵便局の集配人を名乗る男から電話があり、「これから荷物を取りに行くので、ご自宅のポストに入れておいてください」と言われ、現金入りの封筒をポストに。その数十分後には封筒はなくなっていた。
詐欺・悪徳商法ジャーナリストの多田文明氏は早くから「アポ電空き巣」の増加傾向に警鐘を鳴らしていた。
「アポ電空き巣は10年ほど前からあった手口ですが、近年は家に現金があることを確認したら、家人がいても強盗に入っていた。今は巧妙化して、家を空けさせて盗みに入る。強盗と違い、顔を見られずにすむ新たな手口といってもいいです」