「フラミンゴはとても敏感な鳥で、ちょっとでも気になることがあると、すぐに飛んでいってしまう。この自然なハーモニーを崩したくなかったから、細心の注意を払って、しゃがんだまま少しずつ近寄って撮影したんです」。そう語るのは、地球をフィールドにネイチャーフォトを撮り続けている写真家の高砂淳二さん。作品「Heavenly Flamingos」で、世界最高峰の自然写真賞であるWildlife Photographer of the Year「自然芸術部門」最優秀賞を、日本人として初めて受賞した。
撮影地は南米ボリビアのウユニ塩湖。「標高は3700mと富士山の頂上と同じですが、周りにはサンゴの化石とかがいっぱいある。もともとは海の中だったんですよ。太平洋プレートと南米大陸、そしてナスカプレートがぶつかって、海の水もろとも、ぐぐぐぐっと持ち上がった。その塩がいま、ここに残ってるんです」(高砂さん、以下同)。
その面積は11,000km²と、四国の半分ほどもあるが、高低差はわずか50cmしかなく、世界でいちばん平らなところとも言われている。その一面の塩原に、雨期になると薄く雨水が張って “鏡張り”の絶景になることで有名だ。
「近くの湖に棲んでいるフラミンゴが餌場に飛んでいく途中で、ウユニ塩湖で羽を休める姿はたまに見かけていましたが、天気もよく、雲もきれいで、風がなく水面も静かという、こんなに良い状況が揃う機会はなかなかない」と高砂さん。その一瞬を捉えた、貴重な一枚だ。
「こんなに美しいところが地球にあるんだ」と知った高砂さんがこの地を初めて訪れたのは2012年のこと。まだ絶景として注目される前のことだった。
「心惹かれた場所に行ってみて、なるべく多くの時間をそこで費やし、ふらふら歩きながらいろんなものを見つけて撮る」のが高砂さんの撮影スタイルだ。その根底にあるのは、「自分がその場に身を置いて見てみたい、撮ってみたい、というシンプルな思い。それがいちばん大きいかな。でも、37年も自然を撮り続けていると、地球をとりまく環境の変化を感じざるを得ない。例えば温暖化もプラスチックごみの問題もどんどん悪化している。その目撃者として、自分が見たことを伝える役目も感じているんです」