吉村洋文・大阪府知事 (c)朝日新聞社
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万博の会場イメージ図 (日本国際博覧会協会提供)
万博の会場イメージ図 (日本国際博覧会協会提供)

 関西経済が揺れている。成長に向けた「頼みの綱」である2025年大阪・関西万博の会場建設費は想定を大きく上回り、IR(カジノを含む統合型リゾート)計画は後ろ倒しに。新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけるなか、地元経済界は頭を抱える毎日だ。

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「これって誰が喜ぶの?」。ある関西財界の幹部は万博会場の建設計画の変更を知り、困惑を隠せなかった。

 日本国際博覧会協会が昨年12月、会場建設費が従来予定の1250億円から1.5倍の1850億円に増えることを発表したのだ。その象徴的なものが、パビリオンが集まる一帯に設けられることになった大きな屋根。しかもリング状の形で、主要通路を覆うという。

 万博協会は、大屋根をつけることで雨や日差しを防げるのはもちろん、来場者が大屋根の上を歩くことができる「空中歩廊」としても楽しんでもらえると説明する。会場全体を見渡せるだけでなく、大阪湾やその先の瀬戸内海までの眺望もきくというわけだ。

 大屋根の幅は30メートル前後、1周した距離はなんと約2キロ。一部は水上にせり出し、低い位置でも高さ12メートルほどになる見込みだ。今のところ鉄骨を使う予定で、その費用は約170億円にのぼる。会場建設費の増額分のうち3分の1近くを占める。

 こうしたコンセプトについて、冒頭の財界幹部は「発想がハコモノ的だ。『5G』で競う新たなデジタル時代に、誰が上ったり歩いたりするかもわからない不確かなものにそんな金を出すのか」と疑問を呈する。

 別の財界幹部も「この(未来志向の)万博で、海や空を見るために(大屋根を)つくるのかと思うと、何とも不思議だ」とあきれる。

 増額された600億円の内訳はこうだ。大屋根の整備に約170億円▽一部施設の面積見直しや再生可能エネルギー関連設備の設置などで約320億円▽物販施設や日本庭園の整備費で約110億円。

 とくに大阪では大型開発工事などが重なり、資材費や人件費の上昇で会場建設費が当初の見込みよりも3割ほど増えるのではないかと懸念されてきた。ふたを開けてみると、3割どころか約5割に相当する増額だった。万博協会によれば、資材費や人件費は毎年およそ1.5%ずつ加えていく見込みで、増額分のごく一部に過ぎないという。

 とはいえ、地元にとって、コストの負担は最大の問題だ。

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