ビーチバレーは、コートと観客席が至近距離で、ファンが接近しやすいという点も事実。鈴木は盗撮以外でも「それ以上に身の危険を感じることが何度かあった」と話す。
「ある大会でサブコートには『選手席』がないので、観客席で対戦相手の試合をチェックしていました。その時、ファンの方から一緒に写真を撮って下さいと言われたので横並びになりました。その時です。バッと腕を組まれたんです。その人は一目散に逃げていきました。自分自身も注意しないといけなかったのですが、ゾッとしました。大会の中でファンの方との交流する時間が設けられるのであれば喜んで対応します。ですが、それ以外では選手が会場を出入りする時も含め、選手と一般の方の動線を運営側に整備してほしいですね」(鈴木)
選手個人が身を守るには限界がある。「選手を守る」という競技団体側の責任や大会運営の成熟も求められるだろう。またJVAビーチバレー事業部は、SNS上にアップされる不適切動画、画像、悪質な投稿に対しては、今後このような措置をとるという。
「ビーチバレーは大半の選手がプロとして活動していますので、個人肖像の管理は本人および所属先に委ねられております。日本代表の肖像において不適切動画、画像だった場合は、JVAのSNS運用規程に則り削除要請等の措置を講じます。被写体本人からの依頼が原則ですので、本人あるいは本人が依頼した弁護士から申し出を受けた段階で対応することになります」
聞くと過去にインドアバレー、ビーチバレーとも選手からJVAに被害の訴えはないという。長らくの間、「水着がユニフォームなのだから仕方ない」と泣き寝入りしてきたこの問題を改善していくには、選手たちが意見書を作成し一丸となって競技団体側に声をあげることも一つの手段ではないだろうか。
選手自身が競技の価値も伝えていくと同時に、正々堂々と自らが競技に集中できる空気を作っていくことが、法整備への近道になるかもしれない。(文・吉田亜衣)
●吉田亜衣/1976年生まれ。埼玉県出身。ビーチバレーボールスタイル編集長、ライター。バレーボール専門誌の編集 (1998年~2007年)を経て、2009年に日本で唯一のビーチバレーボール専門誌「ビーチバレーボールスタイル」を創刊。オリンピック、世界選手権を始め、ビーチバレーボールのトップシーンを取材し続け、国内ではジュニアから一般の現場まで足を運ぶ。