2020年デビュー10周年を迎え、3月17日に初となるベストアルバムを発売するロックバンド[Alexandros]がAERAに登場。結成当初、ガラガラのライブハウスでも数万人の熱狂を思い描いていた。スタジアムを熱狂させるバンドになった今も、彼らはまだ旅の途上にいる。音楽活動にかける思いを語った。AERA 2021年3月15日号から。
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カメラの前の4人の立ち姿には、自然とロックスターの色気が漂う。デビューから10年。いまや[Alexandros]はスタジアムを満員にする日本屈指のロックバンドとなった。躍進の原動力は、「とにかく一番になりたい。ずっとそう考えてきたし、今も思ってます」と迷いなく言い放つボーカル・ギターの川上洋平が持つギラギラとした野心だろう。
川上が音楽に出会ったのは、父親の仕事の関係で中東のシリアにいた小学生の頃。オアシスに憧れ、その時からロックバンドとしての成功を夢見てきた。
「スポーツもてんでダメ、学校でも全然ダメだった。でも、小学校3年生のときに世界一の曲ができたと思えた。それが俺にとっての音楽だったんです。何もなかった少年に救いを与えてくれた唯一のものだった」
大学に入った川上がベースの磯部寛之に出会ってバンドが始まり、そこに川上の高校時代の同級生だったギターの白井眞輝が加入し活動が本格化する。しかしチャンスはなかなか訪れなかった。
「大学を卒業して会社員になって、ずっとデビューを目指したけど、できなかったんですよ。3年やってデビューが決まって、でも1年くらいはバンドだけじゃ食べられないから、バイトしていました」
今年1月スタートのテレビドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」では、川上は脚本家・北川悦吏子のラブコールに応じて俳優としてドラマ初出演も果たした。演技は「チャンネルは違うけど、スイッチは同じような感覚」という。
活躍の場が大きく広がった現在も、「まだまだ全然途上」だ。
「バンドで一番になってやると今も思っているけど、心の奥底では純粋に音楽が楽しくて曲を作っているところもある。その二つを軸に、梯子を上っている感じです」
(ライター・柴那典)
※AERA 2021年3月15日号