多くの人が故郷を失った福島の原発事故から10年が経つ。廃炉作業には問題が山積し、その工程は大幅に遅れている。しかし、そんな先の見えない難題に挑む高校生がいる。AERA 2021年3月15日号で取材した。
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多くの課題を抱え、いまだ解決策が見えない福島第一原発の「廃炉」。その難題に挑む高等専門学校生がいる。
■「実際の現場で役立てば」高専生が開発したロボット
1月下旬、一風変わったコンテストがあった。全国の高専の学生が福島第一原発の廃炉作業を想定した自作ロボットの技を競う「廃炉創造ロボコン」。5回目の今年は、全国13の高専から14チームが出場。初の最優秀賞に輝いたのは、地元・福島の福島工業高等専門学校(いわき市)だった。
同校は、廃炉作業を担う人材育成に力を入れていることで知られる。廃炉関連の授業「廃炉創造学修プログラム」を設け、学生は原子力発電の基礎や放射性物質が付着した土壌の除染などについて学ぶ。「廃炉創造ロボコン」も廃炉人材育成事業の一環で、第1回から参加。今年は、「ロボット技術研究会」に所属する4年生3人が出場した。
その一人、機械システム工学科4年の武田匠さん(19)は将来、原子力や廃炉に携わる仕事がしたくて入学した。
福島県中通りの須賀川市の出身。原発事故が起きた時、小学3年生だった。学校に避難指示区域から避難してきた児童が入学してきて、漠然と原発は「怖い」と感じた。中学生になると事故から5年近く経つのに収束しない事態を重く受け止め、原子炉の仕組みや廃炉に関心を持った。そんな時、福島高専が原子力や廃炉の人材を養成していると知り、入学を決めた。
開発したロボット「メヒカリ」は、機械システム工学科4年の鳥羽広葉(ひろは)さん(19)と電気電子システム工学科4年の冨樫優太さん(19)、そして武田さんの3人で、昨年8月から半年かけてつくった会心の作だ。
武田さんは笑顔で言う。
「ロボットが実際の現場で役立てばうれしい」
高専生活はあと1年。将来のことはまだしっかりと決めていない。だが、高専を卒業したら大学に進み、大学卒業後は福島に戻り、原子力や廃炉に携わる技術者になれればと話す。
「僕が身につけた技術を生かし、福島の復興に役立て、震災前のような元気で明るい福島にしたいです」
未来をつくるのは子どもたちだ。現実と向きあい解決に向けて挑む力が、「フクシマ」を変える。(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年3月15日号より抜粋