「切れやすい性格で、弁護士を何度も解任して、裁判をストップさせた“実績”もある。裁判でも証人の元秘書が検察の方を向くと『なんでそちらを見るんだ』と激怒。不規則発言を注意されている。自由に喋ることができるようになった克行被告が何を言い出すのか…。ヒヤヒヤする」(前出の自民党幹部)

 一方、妻の案里氏が辞職して再選挙になる参院広島選挙区は4月25日が投開票日となる。すでに自民党は元経産省課長補佐の西田英範氏が出馬を表明したが、自民党の政治不信は今も続く。それを象徴したのは、2月28日に自民党の広島県連が再選挙に向けて開催した選対会議だ。克行被告からカネをもらった県議、市議ら数人出席していたという。

 カネをもらった県議、市議の大半が、買収目的だったと認めている。出席した県議の一人は法廷で「選挙を応援してほしいという、買収目的のカネだったと思った」と述べていた。本来であれば、カネをもらった側も何らかの刑事処分をされていなければならない。

 野党が対抗馬として擁立に動いていたのは、元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士だ。しかし、郷原弁護士は出馬を断ったと明かす。

「私がという気持ちはありましたが、仕事の事情などもあり出馬は断念しました。克行氏と案里氏は買収で逮捕。だが、なぜ検察側が被買収の自民党の県議、市議を立件しないか不思議です。公職選挙法違反の買収という選挙に関連した容疑ですから、被買収側は案里氏のように公民権停止となるのが一般的。それが、処分はなく、公民権停止もなく、今回の選挙応援をするなんてあってはならない。誰も声を上げなければ、自民党の圧勝です。そして、買収も1億5千万円の問題も政治とカネのことも、チャラだとなってしまう」(郷原弁護士)

 4月25日、衆院北海道二区、参院長野県選挙区でも補欠選挙がある。自民党はどちらも議席がとれない公算が大。

「広島は絶対勝たねばならない。そこへ、克行被告の買収や1億5千万円の話をあちこちでされたら、最悪だ」(前出の自民党幹部)

 勝敗の行方に注目したい。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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