AERA 2023年2月3日号より
AERA 2023年2月3日号より

「このスマホのスクロールを繰り返す欲求を断ち切らないと、ストレス耐性が弱まり、メンタルヘルスを悪化させる負の連鎖から抜け出せなくなります」

■「あえて不便に」が重要

 ニュースサイトやSNSはスクロールを続けるよう、閲覧した情報と同類の情報が繰り返し表示される。このため、偏ったネガティブな情報ばかりに接することになる。そんな悪循環を断つため、森下さんが勧めるのは「情報ダイエット」だ。

 例えば、休日はニュースアプリや、可能であれば仕事で使うアプリもスマホからアンインストールする。電車に乗っているときは閲覧しない、トイレには持ち込まない、といったルールを自分に課す。スマホ画面に大量のアプリを表示している人は1ページ分に収まる数に絞る。SNSやニュースアプリを目的なく閲覧してしまう場合はスマホのホーム画面下には置かない、といった対応だ。森下さんはこうした「あえて不便にする」環境設定が重要と言う。

「日本では隙間時間の活用を肯定的に捉える風潮もありますが、仕事のオン・オフのメリハリをつけ、脳をお休みさせる時間をつくるのは、これから必須のスキルになると思います」

「脱デジタル」の社会的ニーズをいち早く察知し、旅行プランに組み込んだのは中高年層にも人気の「星のや」だ。チェックイン時にスマホやパソコンを預け、自然を満喫するアクティビティーに浸る2泊3日の「脱デジタル滞在プラン」を14年以降、順次拡充してきた。

■デジタル遮断する覚悟

 このプランを先進的に導入してきた「星のや軽井沢」では、軽井沢彫を施した木箱にデジタル機器を預けるシステムだ。スタッフの佐藤拓也さんは言う。

「電源を切って手元に置いておけばいいじゃないか、という声もあるかと思いますが、こうした通過儀礼があることでデジタルを遮断する覚悟ができる、という方もいらっしゃいます。一時的であってもデジタル機器と離れるためのサポートをし、自然や自分と向き合う時間を体験してほしいと考えています」

 佐藤さんはパンデミックの経験を経て、旅の目的にも変化が生じていると言う。

「人間を豊かにしてくれる本当の意味での娯楽は、消費的な行動や物質的な豊かさの先にあるのではなく、自然や自分自身とゆったり対話できる安らぎの時間の中にある、と考える方は着実に増えていると感じます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年2月6日号より抜粋

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