「店が時短を守っても感染者数は一向に減らない。じゃあ、今やっていることは何なの?」
そうこぼすのは六本木芋洗坂沿いにある老舗の居酒屋「あぶらや」店主の三浦治さん(73)だ。コロナ前は近隣のクラブへの同伴や観光客でにぎわっていた。
「緊急事態宣言を延長して感染者数が減るならいいけど、全部が中途半端。1日6万円の協力金も家賃分がなんとかなるくらいで、それだけでは生活できないよ」(三浦さん)
生命線の一つでもある協力金の支給遅れも問題になっている。
東京都では、(1)昨年11月28日から12月17日まで、(2)昨年12月18日から今年1月7日まで、(3)1月8日から2月7日までの協力金の支払いが始まっているが、3月5日時点での支給率は、(1)こそ93%だが、(2)は55%、(3)に至っては4%と遅れている。
都につながらない電話
「未支給の状態でしのげるのは、あと1カ月くらいです」
杉並区でバーを経営する50代の男性は都の支給遅れについて憤る。2月10日頃に申請し、3月頭に書類不備の通知があった。すぐに対応したが、その後も2週間ほど音沙汰がなかった。
「何の書類が必要なのかわかりづらく、都に問い合わせをしていますが電話を何十回かけてもつながらない。周りのオーナーで協力金をすでに受け取っているのは、10人中2人くらい。支給を待てず、通常営業を再開した店もあります。プール金がないところはそうするしかない」
好転しない状況が続き、日増しに「息切れ」も聞こえてくる。
東京商工リサーチによると、3月18日時点で負債1千万円以上の「新型コロナウイルス」関連破綻の累計は全国で1146件に達した。都道府県別にみると、東京が279件と突出。次いで、大阪108件、神奈川58件、愛知53件、北海道49件と都市部に集中する。さらに業種別では、飲食業が最多の199件、アパレル103件、建設業100件、宿泊業が70件とコロナ禍の経済打撃が特定業界を襲ったことがわかる。負債総額が1千万円未満も含めれば、さらに多くなることは自明だ。
東京商工リサーチ情報本部の増田和史さんは言う。
「当初は飲食、宿泊、アパレルがコロナ打撃の3大業種と言われていましたが、昨年12月頃からは建設業も目立ち始めました。時間の経過とともに二次的、三次的な影響が出ています」
コロナ関連破綻件数は2月に最多となり、3月はさらに上回るとみられている。2度目の緊急事態宣言の影響は3月末からゴールデンウィークにかけて表れることが予測され、宣言が解除されても油断はできない。
さらに、コロナ禍以後の資金問題にも警鐘を鳴らす。
「資金繰り支援で無利子や無担保、返済据え置きなどの緊急融資が出ています。ただ、業績回復が伴わないなかでの融資はあくまでもモルヒネのようなもの。今後、過剰債務問題に直面するケースも出てくるでしょう」(増田さん)
(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年3月29日号