長引くコロナ禍に、繁華街やオフィス街の「空室」が、心なしか目に入る。緊急事態宣言は解除されたが、努力を続けた企業や飲食店は好転するのか。AERA 2021年3月29日号から。
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開かれるはずだった東京五輪2020にあわせるかのように、昨年7月オープンした東京・渋谷「MIYASHITA PARK」。かつて公園だった場所が「明治通り」に沿って商業施設となり、人気を集めている。
そこから原宿方面に歩くこと数分。1990年代には個性的なセレクトショップやインポートショップが立ち並び、休日には人いきれとなった明治通りが、今、どことなく静かだ。
「FOR RENT」
「2月23日で閉店しました」
閉業を知らせる貼り紙とともに、空室ががらんと佇む。都心はこの1年でテナントの撤退が続いたが、渋谷や原宿も例外ではない。路面店の窓には、新たな入居者を募集する広告を見かけるようになった。
コロナで「品薄感」一変
空室は、ビジネスオフィスにも現れている。
オフィス仲介大手の三鬼商事の調査によれば、コロナ禍でオフィス空室率は上昇。東京都心5区の2月平均は5.24%にのぼり、前年同月の1.49%から12カ月連続で悪化している。
地区別にみると、港区6.88%や渋谷区5.55%などが高い一方で、中央区4.68%、千代田区3.85%とは若干の開きがある。東京5区の調査対象は基準階の面積が330平方メートル以上の賃貸ビル。在宅勤務を取り入れやすいIT企業が集まる港区や渋谷区が、好不調の目安となる5%を超えている。
「大手企業の退去により、複数の大型ビルで賃料を下げる動きもあります」
そう指摘するのは、不動産市場を調査する三井住友トラスト基礎研究所副主任研究員の川村康人さんだ。コロナに襲われる前の都心部は空室が極端に少なく“品薄感”の強かったオフィス市場。それを見込んでのビル竣工も増えたが、コロナでその様相は一変。複数の企業が退去するビルも出始めたという。