昨年からコロナ禍の中でオリンピックを目指す経験を通して「なぜ泳ぐんだろう」「オリンピックに行く目的はなんだろう」という自問自答を繰り返してきました。選手も同様で社会人の小堀勇気は昨年春には競技をやめようかという話までしていました。ここ数カ月の彼の充実ぶりを見ると、向かい風の中で葛藤を乗り越えて競技を続けたことで、精神的にも一回り成長したと思います。

 スポーツや水泳に対する考えが私自身も変わったし、選手も変わってきたなと思っています。マイナス面もたくさんあったかもしれないけれど、一緒にトレーニングしている選手と自分にとっては、立ち止まっていろんなことを考える時間をいただいた、と受け止めています。水泳の技術、トレーニング、考え方まで去年の今ごろより充実している実感があります。

 海外の合宿に行けなかったのは残念ですが、逆に東御市の合宿で多くの人とのつながりを感じたり、新しいトレーニング方法を考えたりすることができて、自分の中では発見もたくさんあった1年間でした──。

 東御市では12月、2月、3月と3回合宿をしました。宿舎、食事、練習施設など手厚い支援を受けています。地元の人たちの熱い応援から、五輪を迎える高揚感やよろこびを感じて、うれしくなります。選手たちにとっても大きな追い風です。結果で期待に応えたいと思っています。(構成/本誌・堀井正明)

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数

週刊朝日  2021年4月2日号

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