コワーキングスペースはもともと、個人事業主の利用が多かった。それがコロナ禍にあって、一般の会社員が使うようになってきている。
米ニューヨークが発祥で、コワーキングスペースを展開するWeWorkは18年に日本市場へ参入。現在は全国7都市に37拠点を展開し、拠点を広げている。1人当たり月額3万9千円(税抜き)で、インターネット通信が自由に使えて、フリードリンクのサービスもある。他の利用者を気にせずに電話できるコーナーや会議室も備える。法人契約して従業員に使えるようにするなど、企業が自前のオフィス以外の職場環境を整えつつある。
東急が運営するNewWorkは、業界最大規模の会員制サテライトシェアオフィスで、拠点を全国に拡大中だ。日本でも、サテライトオフィスやコワーキングスペースに次々と事業者が参入し、都心外にも仕事のできるスペースが広がる。
そんな東京近郊で、住宅評論家の櫻井幸雄さんが「これから大きく化けてくる場所」とみるのが多摩ニュータウンだ。
JR新宿駅から電車で約30~40分のベッドタウンとして、1960年代半ばに開発。都心の住宅供給が逼迫(ひっぱく)するなか、多くの人が持ち家を求めて移り住んだ。
だが、住民の高齢化で「『年寄りの街』と言われ、不動産価格が抑えられていた」(櫻井さん)。最近は新規物件の供給が途切れており、コロナ禍で中古物件の注目度が高まっているのだ。広い中古マンションが多く、約90~100平方メートル台で2千万円前後から買えるという。
「山手線の内側は価格が上がりすぎて手が出せず、外側の『23区』も上がり気味。一般の会社員が買えるのは、多摩ニュータウンのような『近郊外』になります」(同)
都心が変わるとともに、“多摩回帰”も起こるのだろうか。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2021年4月9日号