交通の便のいい一等地の自社ビルや事務所……。オフィスだらけの東京都心の街並みが今後、一変するかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でテレワークが進み、オフィスを使う需要が減りつつあるためだ。
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「新型コロナの業績影響によるコスト削減や、その影響がなくても、こんなにスペースはいらないことがわかった。オフィスに必要とされる面積が縮小し、新型コロナの収束後も元に戻ると考えている人は少ない」
オフィス仲介の三幸エステートの今関豊和・市場調査部長はこう話す。
コロナ禍で企業は固定費の削減が急務になっていて、オフィスを売却する動きが止まらない。
広告会社大手、電通グループが象徴的だ。JR新橋駅近く、都営大江戸線の汐留駅にほぼ直結する地上48階建ての巨大本社ビルを売却する方針だ。売却額は総額3千億円規模で、譲渡先から半分程度の面積を借りて入居するとみられている。
大型イベントの中止や経済活動の縮小で、電通は2020年12月期の決算で純損失が約1600億円にふくらみ、2年連続で最終赤字に陥った。
一方、テレワークが浸透し、本社ビルに勤める9千人超の出社率は、約2割にとどまるという。このため、持て余している仕事場などを見直す。
エンターテインメント業のエイベックスも、都心の本社ビルを売り払い、21年3月期に譲渡益290億円を見込む。音楽ライブやイベントの自粛で、同期は9カ月(4~12月)で約43億円の純損失を出した。電通同様、譲渡先から今のビルを一定期間借りて入居する。
本社機能の大半を都心から兵庫県・淡路島へ移すのは、人材派遣のパソナグループだ。本社社員約1800人の7割近く、人事や経営企画などを担う1200人が対象。23年度末までに進める計画で、新しい生活様式に対応した働き方を追求する。
国土交通省が昨秋、都内に本社を置く上場企業にたずねたアンケート(有効回答約370社)では、テレワークを想定したオフィス床の縮小を「すでに検討」「今後検討する可能性がある」とした企業は60%にのぼった。