我が子に希望のランドセルを購入するための活動「ラン活」。その時期は年々早まっており、中には入学の1年以上前から予約がスタートするブランドも。価格もこの10年で1.5倍になっている。そんな活況にある「ラン活」だが、疎外感を感じている人もいるという。AERA 2021年4月19日号で取材した。
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ラン活に疎外感を抱いている人もいる。
「ランドセルに夢と希望をいっぱいつめて頑張ってくださいね」
埼玉県内に住む女性(39)は、長男の保育園の卒園式で読み上げられた祝電の言葉に、胸が締め付けられた。
「うちの子はランドセルを背負えないのに……」
長男は特別支援学校に進学が決まっていた。特別支援学校はカバンが自由に選べるところが多く、着替えなどがまとめて入る大きくて実用的なリュックを使う児童も多い。重い自閉症で知的障害もある長男にとって特別支援学校はベストな選択だと思っているが、あの祝電で、妊娠中に我が子がピカピカのランドセルを背負う姿を想像していた記憶がよみがえった。
「ランドセルに『我が子が普通ではない』と突き付けられた気がしました。周囲には、使わないのに購入するご家庭もあります。ランドセルの呪縛ですよね」
今春から長女が地元の小学校の特別支援学級に通う女性(42)は昨年春、保育園の保護者から「人気の品は早めに売り切れる」と聞き、焦らされた。でも、特別支援学校に行く可能性も残されていたためまだ買えない。就学先が決まった昨年11月には工房系ブランドなどはすでに受け付けを終了していた。
「ラン活の時期が早すぎて、支援学校か支援学級か悩む人にとってはつらいです」
■経済格差が表れやすい
高額化も頭の痛い問題だ。国民生活基礎調査によると、18年の子ども(18歳未満)の貧困率は13.5%で、7人に1人の割合だ。母子・父子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は48.1%にのぼる。
離婚し、年長の双子の娘たちを育てる千葉県の女性(35)はランドセル購入時期で悩んでいる。経済的に厳しい家庭には自治体の就学援助があり、入学準備金として子ども1人あたり約5万円を支給してもらえるが、振り込みは入学前の2月頃。選べるランドセルの種類も限られるのではないかと不安だ。算数セットや体操服、上履きなども購入するので、ランドセルはできれば3万円台前半にとどめたい。