感染者の急激な再拡大により、4月5日から「まん延防止等重点措置(まん防)」が実施されている兵庫県。同県が会食時に口元を覆うために「うちわ32万本配布」を発表したことが「税金の無駄遣いだ」と物議を醸している。しかもこの施策を決めた行政プロセスにも疑義が生じており、同県の対策本部会議に出席した専門家からは「まったく相談なく決まった」と批判の声も上がっている。
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9日、兵庫県の井戸敏三知事は記者会見で「まん防」の対象区域となった神戸市など4市内の約1万6千店舗に、1店舗あたり約20本ずつうちわを配布すると発表。会食時にうちわで口を覆う「うちわ会食」を呼びかけた。
「グループだと会話が弾む。扇子でもハンカチでも、なんらかの対策をしてもらえれば」
井戸知事は狙いをこう説明したが、報道陣から「うちわ」の科学的な根拠を問われると「フェースシールドがOKならば、飛沫感染防止でうちわや扇子もOKなはず」と述べただけだった。
このニュースが報じられると、SNSでは「誰も止めなかったのか」「税金の無駄」「思考が停止しているとしか思えない」など批判の声が相次いだ。同日には「うちわ会食」がTwitterのトレンドに急浮上し、にわかに“炎上”状態となった。
県防災企画課の担当者によれば、うちわ32万本の配布に使う予算は、約700万円だという。だが、科学的根拠について問うと、
「コンピューターでシミュレーションをしたわけではないので、科学的な裏付けがあるわけではありませんが、何もないよりは軽減できるのではないか」
と知事と同様にあいまいな返答をするのみだった。
担当者によると、うちわの配布は専門家を交えた4月9日の対策本部会議で決定したという。だが井戸知事は9日の会見で、「(委員からは)『うちわなんかを使って会食するような段階ではない』という意見が出た」とも述べていた。
どのような議論をへて、うちわ配布は決定されたのか。