「実は県からは、何も相談がなかったんですよ」
こう語るのは、委員として対策本部会議に参加した有識者の一人だ。この委員によれば、会議の時にはすでに参加者の机上に、現物のうちわが配られていたという。9日の会議時点では「うちわ32万本配布」はすでに決定事項として、県から説明を受けただけだった。
「まともに感染防御を考えている識者ならば、賛成する人などいません。あのような小さいうちわでは飛沫が飛び散り、防ぐことなどできませんから。これから暑い季節になってうちわが手元にあれば、あおぎたくなるでしょうし、あおいでしまったらむしろ逆効果です。完全にアイデア倒れであり、勇み足だと思います」(同)
配布するうちわの数は、各飲食店に約20本ずつ。この数に根拠はあるのだろうか。
「何も相談がなかったのでわからない。普通に使ったら、20本なんてすぐに使い切ってしまいます。消毒して使いまわしたところで、安全とは言えません」(同)
さらに委員はこう主張する。
「誤解してほしくないのは、会議の場でうちわの配布について議論したわけではないということです。病床の確保や自宅療養転換に対する議論が本題で、普段は県も各団体から、かなりきめ細かく意見を聞いています。今回のうちわに限っては、県の勇み足で、おそらく知事の独断で決めたこと。兵庫県ではこんなことを議論しているのかと思われたら心外です」
9日の対策本部会議では、「うちわ配布」について本当にきちんとした議論がなされたのか。県に改めて問い合わせるとこう回答した。
「会議の場で配ったうちわはあくまでもサンプル。ご説明をして、委員から大きな反対の意見が出なかったので決まったと聞いている。会議の様子を見ていたわけではないので、詳しくは分からない」(担当者)
うちわは4月15日頃から順次配られる予定だ。「うちわ会食」が“アベノマスク”のような愚策にならないことを祈るばかりである。(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)