「高齢者」と年齢でひとくくりにすることをやめたい。みな個人で、一人一人違う考えを持ち、一番自分らしい最後を生きたいと願う人たちの自由を奪わないでいただきたい。施設に入らずともひとり暮らしで楽しく仕事も趣味も持ち、生涯現役の人が増えている。寿命も九十歳、百歳など珍しくない昨今、自分で生き方を選べる社会であって欲しいのだ。
高齢者差別が存在する現状をある小冊子に書いたら、スポンサーからクレームがきて、差別という言葉をやめてもらいたいと言ってきた。
性差別をはじめ、実際に差別があるというのに、差別という言葉を使わないわけにはいかない。ということで、その原稿はとりやめにしたが、差別という言葉への差別すら、この世に存在することを知らされて唖然としてしまった。
※週刊朝日 2021年4月23日号
■下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数