「アイドルに未練はない」と話すのは、元アイドルの形成外科医・秋山ありすさん。県立修猷館高を卒業後、1年間の浪人を経て九州大医学部に進学。2011年から6年間、福岡市を拠点とするアイドルグループ「LinQ」の1期生として活動した。現在は大学病院に勤務する。学生時代を振り返り、今を語る。
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幼いころ、気管支が弱くてよく病院に行ったんです。母も体が弱く、助けてあげたいと思いました。そこから「お医者さんになりたい」と考えるようになりました。
修猷館高では、2年時から30人ほどの医学部進学クラスに入りました。OB・OGの医師に講演してもらったり、病院を訪問したりしました。
でも、医師になることを意識した生活は送っていませんでしたね。ESS(イングリッシュ・スピーキング・ソサエティー)部の部長を務め、スピーチコンテストで賞をもらってニュージーランドに短期留学するなど課外活動に熱中していました。
修猷館は学校行事に力を入れています。運動会は夏休みも練習するほど。運動会の幹部が「なんで本気でやれないんだ」と言うと、私も「本当にそうだ」と本気で泣きました。高校でしかできないことに取り組みました。
地元の九州大を受け、結果浪人しましたが、3年間高校生活を満喫したので後悔はありませんでした。クラスメートも多くが浪人したので、励まし合いながら勉強を頑張れました。
アイドルは九州大に入って始めました。妹が私も一緒に応募したからです。私は大学を卒業してやめるつもりでしたけど、医師国家試験に落ちてしまって。どうするか悩みましたが、ファンの方々に正直に結果を公表して活動をお休みにし、合格後にアイドルを卒業することにしました。
そしたら不合格の話がニュースになり、全国に恥をさらしてしまい、ネットで「学生の本分はどうした」と厳しい評価を頂きました。励ましの言葉もあって何とか1年後に合格できました。
アイドルは人のQOL(生活の質)を上げていくために存在していると思います。形成外科医も同じです。患者様に「手術してよかった」と思ってもらえる魅力にとりつかれています。アイドルに未練はないです。将来は美容の分野で人の喜びに関わっていきたいです。
医者になっても辞めてしまう人が多いです。お金を稼ぎたい、成績が良いという理由だけで医者を目指すには、責任が重く、つらいことも多いです。「誰かのために医者になりたい」と思う人に臨んでほしいですね。
※週刊朝日 2021年4月23日号