男性は離婚歴があり、お見合いパーティーに参加したことは何度かあった。だが、コロナ禍で感染リスクを配慮して出会いのイベントに行くことを自粛。真剣に交際できる女性を探すため、マッチングアプリを利用したという。

 中国人女性とSNSで断続的にやり取りして1カ月が過ぎた頃、海外の暗号資産取引所でのFXを勧められたという。男性は「マッチングアプリを使う目的が違う」と感じて断り、連絡も一度途絶えたが、1か月後に再び連絡が来たという。
 
「コロナで会社の収益が落ちていたこともありましたね。投資には前々から興味があって運用を考えていたので話だけ聞いてみようかなと」。

 これが転落の入り口だった。

 中国人女性は自身が働いている証券会社のホームページを紹介。確認すると、世界各国の投資家がこの証券会社を利用して、数億円の利益を出したことが掲載されていた。

 中国人女性の指示を受けて、証券会社に口座を開設。免許書の写真も求められた。

「何の疑問も持たなかったですね。ただ、証券会社の住所、電話番号が記載されていないのが気になりました。その女性とのやり取りもLINEのみ。この時点で怪しいと気づかなければいけなかったのですが…」

 500万円を口座に入金して、取引は中国人女性に委ねた。指示を受けてダウンロードしたアプリで暗号資産のチャートを見ると、売買を繰り返して1週間で1500万円に増えていた。このチャートは実際に存在するものではなく、偽造だったがこの時点で男性は気づかなかった。

「1500万という数字を見て、完全に信じ込みました。女性に『来週は4年に1度しかない相場の大きなヤマがある。1000万円を振り込んでくれれば、1億円にする』と言われて。1000万円はさすがに額が大きいと思いましたが、躊躇していると好機を逃すと思って振り込んでしまいました」

 計2500万円から3週間後、9000万円に増えた。だが、その1か月後、暗号資産が大幅に下落。買いでエントリーしていたため、大きな損失を被った。資金は一気に800万円まで減っていた。

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「コロナで女性は死んだ」と言われ、詐欺かと