青野社長の頬にクッキリ残された手形の跡(本人提供)
青野社長の頬にクッキリ残された手形の跡(本人提供)

 その後、招待客から「俺も、俺も」と希望者が殺到したが、猪木さんは「今日は彼だけです」とさりげなく三平さんを立ててくれた。

「闘魂注入されて、昭和の人の思いを受け継ぎ、令和の若者につなげたいと誓いました。もう願いはかないませんが、できることならもう一度たたかれたいと思いますね」

 クラウドサービス「キントーン」などを展開するサイボウズの青野慶久社長(51)が闘魂ビンタを食らったのは12年9月26日。同社が開いたカンファレンスの特別ゲストに猪木さんを招いた。

 青野社長が語る。

「当社が社運を懸けてクラウドサービスを立ち上げたばかりの転換期でした。市場に投入したばかりのサービスにインパクトが必要ということで、ビッグなゲストを呼びたいと思っていました。猪木さんにお願いしたのは、私がプロレス好きで、小さいころから憧れの人でもありましたが、世界に向かってチャレンジを続け、一人でそれを切り開いていった人だから。われわれもグローバルに切り込んでいきたいという思いからでした」

 青野社長の基調講演のあと猪木さんが登壇し、2人が対談。その流れで闘魂注入と相成った。

■売り上げ上昇もビンタの効果か

「猪木さんを特別ゲストに呼んだときから、格闘技に詳しい社員に教えてもらい、ダメージの少ないたたかれ方の練習をしたことも思い出ですね。その瞬間は、“バチ~ン”というより“ドシャ~ン”という感覚。そのとき撮った写真には猪木さんの手形がくっきりと写っていました。痛いはずなのに、写真の私は至福の笑顔(笑)。事実、うれしかったんですよ。その後しばらく友人たちに自慢しまくりました(笑)」

 この年以降、同社の売り上げは上がり続ける。

「ビンタ効果でしょうかね(笑)。少なくともあれ以降、社員のみんなが世界を目指して頑張ろうという気持ちになれたのは間違いありません」

 何度も“闘魂注入”を受けた人もいる。福岡市長の高島宗一郎氏(48)だ。

 36歳で市長選に初出馬した10年11月9日、個人演説会で一発。12年2月は、市が開いた飲酒運転撲滅運動で、それ以前にも猪木さんが会長を務めるプロレス団体のイベントが福岡であったとき、元九州朝日放送アナウンサーとして司会を務めた高島氏に壇上で一発。本人も「今まで何発ビンタされたか正確には覚えていない」と笑う。

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