「空港の検疫で陽性が発覚していたのにもかかわらず、自治体で受け入れてしまいました。検疫と大会組織委員会、自治体とが迅速に情報共有をして、どこが責任をもって対応するのかを決めたほうがいいと思います。すでに、市職員が濃厚接触者になっていますが、これ以上スタッフが濃厚接触者にならないように、動線を分けて立ち入る範囲を厳密にしておくことも重要です」(寺嶋教授)
東京五輪では、選手間による「バブル内で感染するケース」も心配だという。
「レスリングなど試合中にマスクをせずに接触する競技においては、選手同士が感染するリスクがゼロではありません。万が一、競技には勝っても感染が発覚した場合はどうするか。起きてしまった時のことをシミュレーションして取り決めておかないと混乱が生じると思います」(同)
もし、選手に陽性が確認されれば、競技によっては、対戦相手が濃厚接触者になりうる。濃厚接触を免れた選手だけが出場しメダルを獲得するという結果になれば、五輪そのものの意義も問われるだろう。
さらに警戒したいのが変異株だ。23日に開かれた厚生労働省の専門家会議で、京都大学の西浦博教授らのグループは、インドで確認された「デルタ株」について、従来のウイルスの1.95倍の感染力があるとする推定結果を発表した。東京五輪が開幕する7月23日時点では、全体の68.9%が「デルタ株」になるとも試算を出している。
世界中から人が集まることにより、さらなる変異株の流入を招くことも心配されると寺嶋教授は言う。
「刻々と変異するウイルスの中には、南米ペルーで感染を拡大させている『ラムダ株』のように、WHOがVOI(注目すべき変異株)に指定している変異株があります。インドで確認されたデルタ株もはじめはそうした位置づけで、感染拡大が深刻になってからVOC(懸念される変異株)に格上げされました。『ラムダ株』については情報が不十分なためVOIにとどまっています。まだ日本では確認されていませんが、注意した方がいいでしょう」(同)