「正体隠しの勧誘の場」だったのだろうか。実際、当時74歳の韓鶴子氏に合わせて74人の一般参加者の動員目標が設定され、達成報告も記されていた。
早稲田は狙われている
アエラは、当日の集合写真を入手した。そこにはムン・ヨナ氏のほか、原理研究会の会長や教団関連団体の幹部らが大勢の参加者とともに写っている。
さらに、韓国の旧統一教会系メディアは、「早稲田大学がムン・ヨナ会長を招待」し、教授や学生ら約400人が参加したと報じていた。
講演を主催した早稲田カープに事実関係を問い合わせたが、期日までに回答は得られなかった。また、学内での講演活動について早稲田大学は、
「早稲田祭の運営スタッフより学生部への報告はありましたが、理事会への報告は行われておりません。その時点で世界平和女性連合に関して反社会的であると捜査機関や裁判所が断定もしくは学生から深刻または多数の被害やクレームが届いたなどの情報を得ていなかったため」
などと回答した。17年に講演会実施の判断をしたことについては「不適切だったとまでは言えない」とした。渡辺弁護士は肩を落として言う。
「講演があった当時はすでに旧統一教会の反社会性は明らかで、大学人として情報がなかったとは言ってほしくない。早稲田は狙われている当事者です。カルト宗教の実態を知らないというのでは学生を守る環境は作れません」
早稲田は世界平和女性連合について、今後は「慎重な検証や議論が必要」としている。信仰によって学生が差別されることはあってはならない。だが、実態を隠した活動から学生を守る対策は急務だ。(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年12月5日号