舞台「喜劇 老後の資金がありません」(8月13~26日・新橋演舞場 9月1~15日・大阪松竹座)で、優柔不断な主婦の役を演じる渡辺えりさん。40年以上、劇団に関わってきた渡辺さんが、作家・林真理子さんとの対談に登場。お金がかかっても芝居をする意義を語りました。
【40年劇団に関わってきた渡辺えり「時代に合わなくなってきた」】より続く
* * *
林:えりさんはこんなに映画やお芝居やテレビに出ているのに、いつも「お金がない」とおっしゃってるでしょう。以前私が「えりさん一人だけでやったら、いくらでもお金持ちになれるのに」と言ったら、「そういうのは絶対にイヤ」とおっしゃって。すごい人だなと思いましたよ。
渡辺:芝居をやっているとお金が出ていくんですよ。赤字が800万とか1千万とか出て、それを自分が補填(ほてん)しなきゃいけない。「それならやらなきゃいいでしょう。老後のために貯金したほうがいい」って言う人がいるんだけど、なんでそういうことを言うのかわかんない。お子さんがいる人だったらそうかもしれないけど、自分が豊かになるって、自分が楽しいだけじゃないですか。でも、私はお客さまの笑顔がほしいし、仲間の笑顔もほしい。私はものをつくって喜んでもらうのが好きだからやってるわけですよ。偽善的なことじゃなくて。
林:ええ、わかります。
渡辺:わかりやすい芝居だったらお客さんもいっぱい入って儲かりやすいけど、私のはシュールな作品だから、一般の人にはなかなか受け入れてもらいがたい。「だったら、わかりやすいのをやればいいじゃないか」って言われるけど、ピカソだってマグリットだって、わかりにくい絵を描いても、好きな人は好きじゃないですか。文学もいろんなものがあるからおもしろいんであって、林真理子さんのようなおもしろくわかりやすい小説もあり、上田岳弘さんのような難解なものもあり、いろいろあっていいわけでしょう。