林:はい、そうですね。

渡辺:演劇も、三谷幸喜さんみたいにわかりやすい芝居を書く人もいれば、別役実さんとか清水邦夫さんみたいにシュールでテーマが濃いものを書く人もいれば、いろいろあるのが健康な世界だと思うんです。私も自分の好きな世界を自分の料理の仕方で書きたい。それを提示したときに「おもしろくない」と言う人がいてもいいし、「いやー感動した」と言って泣いてくれる人がいてもいい。コツコツ自分の好きなことをやっていきたいんですよ。

林:なるほど。

渡辺:いまは幸いなことに、私が書いた芝居に「出たい」という役者さんも多くおられるけど、「見たい」と言う人が3人まで減ったとしても、そういう人がいてくれればやりたい。誰もいなくなったら、自己満足にすぎないからやらないかもしれないですけどね。あと10年。今66歳だから、76歳を目指してまた一から再スタートという感じですね。

林:素晴らしいです! 私も今の言葉に勇気づけられちゃった。私もあと10年は頑張らないと。

渡辺:でもさ、うちの親、78からちょっと認知症が入ってきちゃったの。もし遺伝だとなると、私は78までしか芝居ができないんだなと思って……。

林:いやいや、大丈夫ですよ。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

渡辺えり(わたなべ・えり)/1955年、山形県出身。78年に劇団2○○(その後劇団3○○に改名)を結成、20年間主宰。83年「ゲゲゲのげ~逢魔が時に揺れるブランコ」で岸田國士戯曲賞、87年「瞼の女―まだ見ぬ海からの手紙」で紀伊國屋演劇賞個人賞。作、演出、出演すべてをこなし、多くの舞台にかかわる。テレビドラマや映画でも活躍。日本劇作家協会会長。舞台「喜劇 老後の資金がありません」(8月13~26日・新橋演舞場、9月1~15日・大阪松竹座)への出演を控える。

週刊朝日  2021年8月20‐27日号より抜粋

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