■かつては立候補時にも
情報公開と個人情報保護のバランスは、ここ数年議論が続いてきた。かつては立候補時点でも自宅住所が告示されており、それがそのままホームページに掲載される例も少なくなかったが、本目さんらWOMAN SHIFTからの働きかけもあって、総務省は2020年7月、立候補者の住所の告示を「市区町村または字まで」とする通知を都道府県選管に出した。当選後の告示内容を変更するには法改正が必要だというが、自治体の対応も変わりつつある。東京都議会の場合、かつては議会事務局ホームページに事務所などの連絡先住所を掲載するのとは別に、選挙管理委員会が当選人の住所を含む告示内容をそのままインターネット上で公開していた。ただ、現在は、14日間は住所の全部を掲載し、その後は町・字までにとどめる方式に運用を改めたという。
「選挙人が当選人の被選挙権の有無を確認し、異議を申し出る権利を保障するため、異議の申し出期間に当たる『決定等の日から14日間』は住所の全部を掲載しますが、それを超えた日以降は住所の一部を掲載することとしています。都民への情報公開の重要性と、個人情報保護の要請とのバランスを図るためです」(東京都選挙管理委員会)
また、大阪府四條畷(しじょうなわて)市では議会事務局のホームページに議員の自宅住所の掲載を続けてきたが、今年、疑問視する投書があった。現在対応の変更を検討しているという。
自宅住所を公開している自治体でも、「慣例として続いてきた」「変更したいという申し出がなかった」というケースがほとんどのようだ。地方議員のなり手不足や女性の政治参画の遅れが全国的な大きな課題として叫ばれるなか、議員の役割とは何なのか、政治家のプライベートはどこまで公にすべきなのか。幅広い議論が必要だろう。(編集部・川口穣)
※AERA 2022年11月28日号より抜粋