未だに多くの地域で公開が義務づけられている、議員の連絡先住所公開。ストーカー被害の経験がある女性議員は「大きなリスクがある」と話す。議員の情報公開について専門家に聞いた。AERA 2022年11月28日号の記事を紹介する。
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公職選挙法では、選挙に当選して議員となるものについて「住所および氏名を告示しなければならない」と定めている。総務省選挙課によると、「誰が当選したのか、個人を明確にするため」だという。ただ、告示は役所庁舎の掲示板への掲出や公報への記載によって行われ、ホームページでの公開は法律で定められた要件ではない。日本大学の林紀行教授(地方政治)は、ホームページへ掲載する必然性は低いと指摘する。
「ホームページへの住所掲載は、情報公開の必要性が広く叫ばれるようになり、さらに議会のホームページを充実させようという流れのなかで広まりました。ただ、本当に必要なのか、そこまで公にすべきなのかという議論が置き去りになっています。確かに地方議員には居住要件がありますし、どの地区に住んでいるかが投票行動に影響することもあります。それでも、町名や字までの公開で十分でしょう」
■80万円の防犯カメラ
女性の政治参画を推進する「WOMAN SHIFT(ウーマン シフト)」代表で、台東区議会議員の本目(ほんめ)さよさんもこう指摘する。
「住所を公開されることを懸念して立候補をためらうという声はよく聞かれます。80万円ほどかけて防犯カメラを設置したという議員もいました。当選すると自宅住所が告示されますが、それでも指先一つでそれを見られるホームページで公開されるとなると、レベルが違ってきます。女性を含めた幅広い層の政治参画を促すためにも、改善が必要だと思っています」
一方、自宅住所の公開が必要だとする声が全くないわけではない。引退した男性の元市議は、「こんなことを言うと考えが古いと思われるんだろうけど」と前置きしつつ、こう話した。
「我々は地元に根を張り、地元の声を代弁するのが仕事です。ここに住んでいる議員だと地域の人にぜひ知ってほしいし、住所を公開しているから相談に来る人もいた。公人なのに住所を知られたくないとは、そんなことでいいのかと思いますね」
ただ、議員にアプローチする方法はさまざまある。最近ではSNSを運用している議員も多い。先出の林教授は言う。
「市民が議員へアクセスする方法は担保されるべきですが、必ずしも自宅の住所である必要はありません。公開したい人はそうすればいいし、選択できるのが本来のあり方でしょう」