「eMAXIS Slimなどの投資信託は円建てですから、基準価額が下がっていません。一時1ドル=150円台まで進んだ円安が米国株の下落分を吸収している構図です。自分の持っている投資信託が値下がりしないので、心理的なダメージが少ないのでしょう」
単純なイメージで説明しよう。4月1日に米国株が100ドルで、為替が1ドル=100円なら、円換算すると「100ドル×100円」で1万円の理論価格になる。4月2日に米国株が90ドルに下がり、為替が110円になったら9900円。株が10%下がっても為替が10%円安に振れると、円換算した値段はほぼ変わらないのだ。
■自分は損していない
金融リテラシーが高くなく、S&P500の動きをニュース等で見ていない人は“米国株が下がり続けていることを知らない”または“知っているが、自分の保有投資信託が値下がりしていないから暴落を感じない”のだろう。もちろん金融リテラシーの高さから積み立てをやめない層も一定数、いる。
「投資信託の積み立ては、相場が上がっても下がっても、やめないことが大事です。初心者だからこそ余計なことを考えず、半分忘れてコツコツ続けられる。結果的に“正しい投資行動”に近づいていますね」
逆に、2020年や21年の米国株相場を見て「つみたてNISAではなく年初に40万円を一括投資!」などと考えスタートダッシュをした人は、今ごろ後悔しているかもしれない。1月に一括投資することを否定はしないが、これはその年の相場がずっと右肩上がりにならないと悲しい気分になりがちである。相場に一喜一憂せず、買い時を見極めずに続けられるのが積み立て投資の長所だが、“より早く、1月に買ったほうが”とタイミングを図っている時点で何かが違う気もする。
積み立て投資はそもそも、始めると暇だ。暇だから、何か他の金融商品に手を出したくなりがち。金利が上がっているなら外貨預金はどうか、為替がこんなに動いているならFX(外国為替証拠金取引)でお小遣いが稼げるのではないか──。