米国、イギリス、ドイツ、韓国よりもはるかに下位で、日本の下にはアイルランドしかいない。
このように、日本の経済が衰退した原因はいくつもある。18年に安倍首相(当時)が3選されたとき、当時の経団連会長の中西宏明氏、トヨタ、パナソニック、NTT、三菱重工などを取材したのだが、誰もが日本企業に強い危機感を持っていて、このままの状態では10年後には日本企業は持続できなくなると言った。そこで安倍首相は、信頼していた西村康稔氏を担当大臣にして、日本の産業構造を抜本的に改革するためのプロジェクトを発足させた。自民党の国会議員と経済産業省、財務省、法務省などの中堅官僚たちで結成され、私も協力した。
だが、安倍内閣は途中で終わった。しかも18年の段階では、日本の経営者たちにとって建前でしかなかった地球環境問題が、いまやリアルで深刻な問題となっていて、菅首相は50年温室効果ガスゼロを宣言せざるを得なくなった。
今、トマ・ピケティなど世界の代表的な経済学者たちが、「資本主義は行き詰まりで、ポスト資本主義がいかにあるべきか」と訴えて世界中で論議されていて、ESG(環境、社会、企業統治)思考なるものが世界の常識となっている。
誰が首相の座に就き、どのようにこの課題に挑むのだろうか。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年10月1日号