中・高時代、僕がグループ交際をしていた女友達が高円寺のミッションスクールに通っていた。夕方の下校時、駅のホームでこうせつさんをよく見かけたという。
「こうせつさんはベルボトムのジーンズにロンドンブーツ。大きなベースを抱えた山田パンダさんが一緒の時もあった。これからお仕事ですかって聞くと、そうだよーって。ホームには青い三角定規やガロが電車を待っている時もあった」
仕事とはラジオの深夜放送のこと。フォークシンガーとリスナーをつなぐ深夜放送は切っても切れない仲になり、新しい文化を生んだ。
「(TBS)パック・イン・ミュージックは(ザ・フォーク・クルセダーズの)きたやまおさむさんの代演から。きたやまさんから番組をのっとられたなんて言われたけど(笑)」
深夜放送を終えて早朝に帰宅、「朝8時頃だった。ドンドンとドアを叩いて荷物が届いていますよ!って、女の子の声に起こされて。こっちはパンツ一枚にむさくるしい長髪。それが今の奥さんです(笑)。隣の隣に住んでいたんだ」
深夜放送で火が付いたのはアルバムB面の曲だった。「リスナーがヒットさせてくれたんです。リクエスト葉書が段ボール2箱も届いてね。それが『神田川』です」
(次号へ続く)
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2021年10月8日号