
「国により規定が違うので一概にはいえないが、ヨーロッパ規格では、構造の条件付きで最大分速54メートルまで認められている」(日本エレベーター協会)
と言い、日本より速い地域や施設もあるようだ。
ちなみに千葉県柏市にあるJR柏駅東口のエスカレーターは、「日本一遅い」と地元では密かな話題となっている。
柏市の担当者に聞いてみると、「速度については測っていませんが、普通のエスカレーターに比べて、とてもゆっくりなのは確かです。聴覚や視覚に障害がある方々に試乗してもらい、このくらいゆっくりなら怖くない、というご意見をいただいて、その速度に設定しました」と、バリアフリーの観点を説明した。遅いことで安心して利用できる人たちもいるのだ。
■「2列立ちが速い」のナゼ
ところで片側空けと、2列で立つ乗り方では、肝心の輸送効率はどうなのか。
構造計画研究所は、過去に
「長さ30メートルのエスカレーターがある100メートルの通路を、350人が通過する時間」をシミュレーションした。駅のエスカレーターの長さや人の動きのデータをもとに、
・エスカレーターの速さは毎分30メートル
・歩行者はエスカレーター利用者の30%
・2列立ちは1段空けて立つ
・片側空けは左側の人は1段おきに立ち、右側の人は2段空けて歩く
との条件を設定して実験したところ、歩行者全員が通過し終える時間は、2列で立つほうが、片側空けより46秒速いという結果が出た。片側空けは、立つ人の列に渋滞が生じてしまうことが遅くなる原因だった。
特定の条件下であり、ある個人で見れば歩いた方が当然速いのだが、全体的には2列で立つ方が合理的だと示した形だ。
新型コロナウイルスの感染が収束しない中での条例施行。「みんなが手すりに触ることや(2列に)並ぶのは大丈夫なんでしょうか」(40代女性)と、接触やソーシャルディスタンスを気にする声もあり、県民の反応はさまざまだ。
埼玉で「2列立ち」は定着し、他の地域にも拡大していくのか。今後に注目が集まる。
(AERAdot.編集部・國府田英之)