映画「スターダスト」の場面(c)COPYRIGHT 2019 SALON BOWIE LIMITED, WILD WONDERLAND FILMS LLC
映画「スターダスト」の場面(c)COPYRIGHT 2019 SALON BOWIE LIMITED, WILD WONDERLAND FILMS LLC

──レコード会社の担当者とのロードムービーという形をとっています。

「自分探しをしていた時期をロードムービーにするのは良策ではないかと感じた。彼を演じるのは、ミュージシャンであることが重要だと思った。ジョニー・フリンを見つけてとても幸運だった。ジョニーはデヴィッドの感情的な経験にコネクトできたから。ほぼ無名のアーティストとして初渡米し、観客が数人だけでライブをやったり……。ジョニーは英国人として自らの経験もあり、巨大な米国へ乗り込む不安な心境を体験し理解していたから」

──主演俳優探しは大変だったのでは……。

「最初は外見がデヴィッドに似ている俳優の名前も出た。彼らにも会ったが、ミュージシャンとしてコネクトできるという点が最も重要だと感じた。歌唱力があり音楽がやれるという点も。ジョニーにはカリスマ性もあるし、彼こそが主演にふさわしいと判断したんだ」

──神格化された完璧なボウイ像ではなく、ユーモアと庶民性という隠れた人間味をひもとくあたりも好感がもてました。

「知り合いの多くは、彼はユーモアのセンスのある人だったと言っている。当時のインタビューを読むと、多彩な顔を持つボウイ像が浮かび上がった。博識でインテリの英国人として発言している場合もあれば、南ロンドンの下町ブリクストン出身の生意気でひょうきんな庶民的な人間像が透けて見えるときもある。アーティストとしても、両面を試していたようだ」

──映画に登場する楽曲選びはどのように?

「当時ボウイが実際にカバーしていた曲の中から選んだ。ジャック・ブレルのようなシャンソン色の強い曲から、雰囲気の違うガレージっぽいブルース色の濃いヤードバーズとか。幅の広い音楽から影響を受けていた点を重要視した。使用許可という制約もあったし。1曲はジョニーが本作のために書き下ろしたんだ。ボウイになったつもりで、ルー・リードっぽくやっている曲だよ。ボウイはルー・リードのことをすごく尊敬していて、彼にインスパイアされた曲がかなりあるんだ」

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