
人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、女性首相について。
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岸田政権が発足した。内閣の顔ぶれには、馴染みの顔が少ない。ということは新鮮と同時に未熟で、親しみが持てないということでもあろうか。
組閣も前もって出来ていたらしくスムーズで、十月十四日解散、三十一日に総選挙の投開票。予想より一週間も早い決定を聞くと「後手後手(ゴテゴテ)」のそしりを受けた菅内閣に学んで、先手先手と考えたのだろうか。
しかし逆に選挙までの日数が少なく、新人の大臣が多いとなると、有権者が内閣の力量や各候補者を理解するには、あまりに時間がなさすぎるともいえる。岸田さんは逃げをはかったわけではあるまい。
有権者に新内閣の中で知っている顔に印をつけてもらったところ、野田聖子さんが一位。次いで萩生田経産相や茂木外相は当たり前。コロナで馴染みの三大臣は消えた。
野田さんは総裁選に名のりもあげたし、彼女の掲げる公約や言葉もわかりやすい。
少子化対策、選択的夫婦別姓の採用、同性婚などマイノリティにも心配りがある。
私は選択的夫婦別姓の導入のあまりの遅さについて、野田さんに雑誌で押しかけ対談をした。ざっくばらんで、私欲より、少しでも政策への賛同者が増えることに心を砕くおおらかさを感じた。
別姓に反対していた稲田朋美さんも最近は理解を持ってくれるようになったと喜んでいた。
その野田さんが総裁選に立候補。前回は推薦人が二十人集まらなかったが、今回は一番最後に手を挙げた。「よかった」とほっとした。
なぜなら、岸田さんの次に高市早苗さんが安倍元首相などに推されて手を挙げたが、彼女だけが、女性の代表では困るのだ。人も知る右の論客。靖国神社参拝をはじめ、様々な言動を見るにつけ、ついていけないものを感じていた。
私がJKA会長の時、何度か挨拶する機会があったが、人をそらさず上手に自分の意見を通す術を心得ていて苦手だった。男性政治家に気に入られるタイプらしく、数多くの役職にもついている。