東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件は計5ルートに拡大し、大会組織委員会の高橋治之・元理事(78)は計4回逮捕され、著名企業のトップらを含む15人が起訴され、終結した。
高橋元理事が得た「ワイロ」の総額は約2億円に上るが、巨額の五輪マネーをなぜ、こうも意のままに動かせたのか?
その原点となる高橋元理事の起用を議論した組織委・調整会議の議事録を入手した。
「ぜひとも、元電通の高橋氏を理事に加えてもらいたい」と口火を切ったのは、組織委副会長だった竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)前会長だった。竹田氏と高橋元理事は慶応大学の同窓生で盟友。東京五輪の招致をめぐる仏当局の捜査対象となり、竹田氏はすべての役職から退いたが、東京地検の捜査でも終盤まで参考人聴取されたキーパーソンの1人だった。
議事録によると、議論されたのは2014年2月27日の調整会議。当時、組織委の会長だった森喜朗氏の部屋に竹田氏、文科相だった下村博文衆院議員、東京都知事だった舛添要一氏、組織委事務総長だった武藤敏郎氏ら6人が集まった。
竹田氏はJOCと組織委とのジョイントマーケティングとなることを理由に高橋氏の起用を提案。すると、森氏が「まだ代理店は決まっていない。だから、この段階では高橋さんはまだだ」と応じた。理事の選任は定款では別組織の評議員会で決めることになっているが、実際は五輪幹部らが「密室」で決めていたという。
会議の出席者によると、「高橋氏が電通とセットで理事になるのは東京開催の決定直後から事実上の既定路線。会議は後付けのシャンシャンという感じだった」と振り返る。
ただ、高橋氏が先に理事になって電通が代理店に決まれば、「東京五輪の招致でフィクサー的な動きをしていた高橋氏が押し込んだという臆測をメディアに招きかねない。森さんが竹田さんの提案をフォローしたんだ」(出席者)と解説する。