コンビでの取材は相乗効果を上げている。宮原さんは「かわいい!」と感覚的にとらえ、小松さんは考古学を学んだこともあって形式を分類するように観察する。村の長老への取材も、小松さんは文献で得た知識をもとに緻密に歴史をたずねる。宮原さんは好奇心のままに質問する。すると長老の本音がポロッとこぼれる瞬間があるそうだ。

 小松さんは家業の工芸ギャラリーの仕事で東南アジア、アフリカなどを旅してきたが、お面のような土俗的な工芸品が洗練され、信仰が薄れているのを感じていた。

「ところが地元の秋田に原始宗教に近い呪術的な文化が残っていて驚きました。過疎化が進み、いつなくなってもおかしくないので、記録しようと取材を始めたんです」

 こんな世界が残っていたとは。写真はあえて載せていない。この本を片手に秋田の農村を訪ねたい。(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2021年11月12日号