作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、立憲民主党について。
【写真】「よろしく、やで」にじむ演出…維新・吉村氏は愛される努力をしている?!
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忘れかけているが、枝野幸男さんはここ数年、最も人々を熱狂させた政治 家だった。2017年に希望の党に排除された議員たちに呼びかけ、立憲民主党(旧)が立ち上がった時、目の前に立ちはだかる大きな壁を突破したような解放感と希望を私たちに見せてくれた。
私は2018年に幾度か枝野幸男氏の演説会や懇親会に参加したことがあるが、当時の枝野さんはまるでスターだった。その言葉の力に多くの聴衆が聴き入っていたことに加え、熱狂的な女性ファンが枝野さんを支えていた。女性たちが一眼レフやスマホで枝野さんの一挙手一投足を収めようと必死だった。懇親会では枝野さんが食事する姿を女性たちが取り囲み、毛穴まで見えそうな至近距離で写真を撮っていた。全員が、枝野さんの顔をプリントしたケータイケースや缶バッヂ、「まっとうな政治」と書かれたトートバッグなど、自作のエダノングッズを誇らしげに持っていた。「ダイエット頑張れ(ハートマーク)って書いてください(ハートマーク)」とトートバッグを渡された枝野さんが「(ハートマーク)の書き方が分からない」と言えば全員がもだえ、「枝野さん、もふもふ~! かわいい~!」という声に包まれていたのだ。
当時、もう一人、政治家でキャーキャー言われていたのは小泉進次郎さんだった。自民党のセレブ美形と野党のモフモフ。モフモフのほうが強いはず! と私は当時希望をもっていたが、あれから3年、セレブ美形もモフモフも今は過去になってしまった。今回の選挙で最も熱狂させたのは、勝ち組イケメン吉村洋文大阪府知事である。
選挙期間中、吉村知事は積極的にインスタグラムを活用し、ライブを行うこともあった。インスタライブを見た友人は、「愛される努力をしている」と感じたという。連日のハードな選挙応援の最中、ホテルの部屋でうなぎを食べて、食後にプリンを食しながら優しい言葉で政治を語る。インスタのテキストは、「ありがとう、やで」「よろしく、やで」と、語尾を大阪弁にして気楽さを演出。フォロワーは25万人を超えていて、「かっこよすぎる」「なんでそんなにかっこいいの!?」「かっこいい」「かっこいいです」「かっこいいー」と、かっこいいという内容しかほぼ書かれていない。